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第14話 怪我な独りも出来ず



「奥へ走れ!!」

突然降ってきた声で我に返る。

――声の言うとおりにしろ。

本能がそう訴えかける。

レアは素早く身を翻し、力の限り地面を蹴った。
何かががらがらと大きな音を立てながら確実に迫ってくるのを背中で感じる。
精一杯走っているつもりなのに、うまく足が回らなくてもどかしい。

声に導かれるまま奥へと続く岩穴に飛び込んだ瞬間、耳をつんざく爆音が坑内に木霊した。
咄嗟に受身を取るも勢い余った身体は一回転半し、岩壁に思い切りぶち当たった。
背中を強打し、一瞬呼吸が出来なくなる。

這いつくばったまま腰を折ってむせぶレアの傍に、一筋の影が落ちる。

「あ…」

うっすらと涙が浮かぶ瞳に飛び込んできたのは、流れるようなブロンズグレイの髪だった。







「怪我は」

涼風を思わせるその声には、心なしか抑揚がない。
怒っているのだろうか。呆れているのだろうか。
無言のままふるふると首を横に振ったレアは、ちょっとした恐れと情けない気持ちとでいたたまれなくなり思わず視線を逸らした。

コウの後方、今し方駆け下りてきた道に目をやる。
通路は爆発でもあったかのように煤だらけで、幾本もの焦げた丸太が飛び込んだ岩穴にちょうど引っかかるようにして山積している。
何故焼け焦げているのかはわからなかったが、自分に迫ってきていた物が丸太だったということを認識した。

彼が来てくれなければ、轢死していたかもしれない。

その事実を噛みしめた途端に恐怖が込み上げてきた。







コウは短くため息を漏らすと、小さく震えるレアの傍らにしゃがみ込んだ。

「功を立てたい気持ちはわかるが、君の任務は武器を届ける事だったはずだろう。
勇猛と無謀は別物だ。履き違えてはいけない」

その深緑色の瞳には諭すような強い光と憂える影が入り混じっていた。

「…ごめん、なさい…」

聞き取れなかったんじゃないかと思うほど小さな声でそう言ったレアは、再び視線を逸らす。

なんて無様なんだ。
一人で出来ると豪語して飛び出し、勝手なことをした挙句死にかけるなんて。
滑稽すぎて泣けてくる。

結局、自分はコウがいないと何も出来ない。
そのことを強く思い知らされているような気がした。

零れ落ちそうになる涙を素早く拭ったレアの前に、細く白い手が差し出された。
立てるかと聞かれ、自分がいまだに伏せっていることに気づく。

そのきれいな手をおずおずと取って立ち上がろうとした瞬間、レアは足に激痛を覚えた。
どうやら飛び込んだときに挫いたらしい。
再び体勢を崩し、小さな唸り声を上げながら足首をさすっていると、突然ふわりと体が浮いた。







いやあぁあぁ!?

「…そんなに嫌か?」

「い、いやじゃないけど…
――って、そうじゃなくって…!」

――お、おおおおおお姫様だっこなんて…!!

女の子なら誰でも一度は憧れるであろうシチュエーションだが、実際にされたらされたで恥ずかしすぎて気絶しそうだ。
本人は気づいていないだけで、実はこれで二度目だったりするのだが。

そのまま歩いていこうとするコウの胸甲板を叩いて慌てて呼び止めたレアは降ろしてくれと目で訴えた。
恥じらいのあまり真一文字に結んだ唇は震え、耳まで赤くしている。
しかしコウはわずかに眉を持ち上げるだけだった。

「足を引きずって帰るのか?
悪いが、君の歩調に合わせるつもりはない」

動けないのだから黙って言うことを聞いていろ。
その口調はいつもの穏やかさを取り戻していたが、言外にそう言われてはどうすることもできなかった。







採掘坑を出る途中、討伐を終えたリエナたちと合流することができた。

「あんた、どうかしたのっ?」

コウに抱きかかえられているレアを見たリエナたちが一斉に駆け寄ってくる。
心配そうに顔を覗き込む彼らに事のあらましを説明すると、足を挫いただけでよかったとその顔から不安げな表情が消えた。

どうやら爆音は坑内に響き渡っていたようで、リエナたちの耳にもその音は届いたらしい。
落ちてきた丸太が山積したときの音のようではなかったし、坑内で落盤でも起きたのだろうか。
あれこれ思案していると、コウが何かを思い出したといった様子であぁと声を上げた。

「間に合いそうになかったんでな、転がり落ちる丸太を魔法で吹き飛ばしたんだ」

「誰が?」

「私が」







血の気が引いていく音を聞きながら本気で胸を撫で下ろすレアだった。


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